家族4人でマンションへ引越したその当日、夜に新居で食べた「鍋」の味が忘れられません。それはちょうど今頃の季節でした。
私たち夫婦と、高校生の娘、中学生の息子の4人家族の引越でした。それまでの賃貸アパートから、分譲マンションへの引越です。引越が近づいたある日、妻がこんなことを言いました。
「私たちにとって初めての、そしてきっと最後の持ち家への引越だから、引越当日は特別な夕食にしたい。家族4人で協力して作った、お鍋料理を食べたい」。
私は「え?」と思いました。引越当日はあわただしく、とても手料理など作っている余裕はないでしょう。おそらくほとんどの人が、引越当日は外食するか、弁当を買ってきて食べるのではないでしょうか。それで私は「みんな疲れきっているんだから、それはむりだろう」と答えました。
けれど、妻の思いは強く、「引越は午後には終わるんだから、荷解きは後回しにして、みんなで近くのスーパーへ買い物に行けばいいのよ。お鍋は具材を買えば、それで半分できたようなものなんだから、『無理』なことは絶対ない」と譲りません。
結局、妻の言うとおりにしたのですが、これが結果としては「最高の引越当日の晩御飯」になりました。
ふつうは、引越当日は荷解きに追われて、ただ「あわただしいだけの一日」に終わるでしょう。けれど、荷解きを後回しにして、家族で鍋を囲むことによって、つくづく「幸せ」を実感することができたのです。
妻のすばらしいアイディアだったと、今でも思っています。